※写真は岩手県の釜石大観音と日の出
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年は大震災に原発事故と、日本中の人々にとって忘れられない年となりました。
また、僕自身にとっても今まで体験したことのないほど走り続けた年でした。
2011年を思い起こせば、バイオディーゼルカーを使ったプロジェクト「バイオディーゼルアドベンチャー」で日本一周中、岩手県花巻市で東日本大震災に遭遇したのが始まりでした。3月11日震災直後、東北では停電、ガソリンスタンドは閉鎖、シャッターの閉まる店には水や食料を求める長蛇の列。沿岸部へ支援に向かうどころか、自分のライフラインをも途絶えた状況でした。
しかし僕には化石燃料に頼らず「廃食油」で走れるバイオディーゼルカーがある。しかもこの燃料で電気も発電できる装備、夜中でもサハラ砂漠を踏破できるようにできている4輪駆動車、情報源のラジオ、PCなどインターネットで情報を発信できる機材も揃っている。そして、今、まさに岩手県にいる。その機動力や発信力を活かして支援することができるかもしれない。いや、やらなければ。そんな決意を胸に、近隣の農家や商店街から食糧や物資を分けていただき、緊急支援のために沿岸部へと急ぎました。
すさまじい事態の現場。そして支援といってもエリアや避難所によって状況が違うため、必要とするものも刻々と変化していきます。「何をすればいいのか」毎日が模索の日々でした。現場では「これでいい」「大丈夫」ということはありません。さらにどうしたらいいのか、どうすることがベストなのかと、考えながら思考錯誤する日々でした。
(※注:支援内容については、現在報告書を作っているところです。近日中にHP上で見れる様に致します)
支援を続け、春がきて、短い夏が過ぎ、秋を迎え、そしてこの冬が経ち、10ヶ月はあっという間でした。BDFで走った距離はいつのまにか5万kmを越えていました。その間現場で見たこと、支援活動の様子はブログやツイッターで綴ってきましたが、振り返る時間もないほどめまぐるしく時が過ぎ、新年を迎えた今、ようやく少しづつ振り返ることができるようになったところです。
直後の物資支援から、心と体のケア、楽器の支援、菜の花の支援……と、時期とニーズに合わせて支援内容を変化させながら続けてきましたが、今こうして振り返り、強く思い出されること。それは被災初期に被災者の方が口々に発した「車の燃料がほしい」「電気が欲しい」という言葉でした。
震災後初期に食料や水が少しづつ手に入るようになると、どの避難所でも車や発電機の燃料を強く求められたのです。車の燃料さえあれば「逃げ遅れて瓦礫の下にいるであろう家族を探すことができる」「もしかすると家族が遺体安置所にいるかもしれない。土葬される前に家族を探し出したい」と(あの頃、あまりにも遺体の数が多いため、火葬ではなく土葬が決定されたのです。結果的には人々の懸命な活動により土葬はされませんでしたが)。行方不明の家族を探すガソリンを手に入れるために、あいているかわからないGSへ、20リッターポリタンクを背負い遠くから歩いてきた人もいました。大切な家族の行方もわからず、本部へ安否確認すら行かれない。そんな中で遺体のリミットも刻々と迫って行く……そんな人々の心境は、想像できるものではありません。
また、自衛隊がお風呂を作った、と朗報が届いても、避難所の場所によっては片道10kmや20km以上もある。当時はまだ送迎バスもなく、雪が降る日もあり、到底歩けるものでもありませんでした。そういった地域のために、天ぷら油で車(BDF/WVO)を走らせる仲間に声をかけ、最大4台となる天ぷらカーのチームを結成。避難所から遺体安置所、お風呂、安全対策本部へと人々を送迎して回りました。もしも近くにBDF精製工場やディーゼル車があったなら……とこの時ほど痛切に思ったことはありません。
また各避難所を回って残念だったのは、ディーゼルの発電機や車が見当たらなかったこと。もしもディーゼルエンジンのものがあれば、僕らのバイオディーゼル燃料をわけることができたのですが、注意深く探しても見つけることができませんでした。
今、被災地の人々は仮設住宅や新住居で生活を始めて数ヶ月。仕事を探し、生活を立て直そうとする方、未だ気力もなく辛い状態にいる方、高齢の独り身で途方にくれる方など、その方それぞれに悩みや不安を抱えながら日々を送られています。そのため仕事ができるようになるための自立支援や、心と体のケアなどが必要な時期だと思います。今後は仕事作りや仮設住宅などへの訪問を通してとくにお年寄りや子供たちへのケアを考えています。
「街づくり」に関しては、行政の復興案に住民が声を出し合いながら、それぞれの市町村で懸命に進められています。多くの人々が関心を寄せるエネルギーについて見てみると、行政が企業などと取り組む大規模な自然エネルギーの取り組みなどはまだまだ時間がかかりそうなのが現状です。
僕はこう思うのです。今回の震災で浮き彫りになったのは、当たり前のように使い、頼りきっていた、押すだけ簡単なエネルギーシステムのもろさとエネルギー自給率の低さだったのではないでしょうか。地域単位で取り組めるような身近な自然・再生エネルギーを活用できたら……という思いがつのります。
現地ではそれらに触れられる場もほとんどない状況ですが、僕は豊かな自然を内包する東北だからこそ、地域単位で行える様々なエネルギーの可能性があるように思えてならないのです。
今後の支援の方向性としては、目の前のニーズに応えるのはもちろんのこと、未来へ向けた支援としてエネルギー自給自足のプロジェクトを、多くの方々と繋がりながら進めていくことを考えています。どこまでできるかわかりませんが、目指すのは自然・再生・新エネルギーを複合的に活用して、エネルギーと食の自給自足ができるようなコミュニティづくり。今まで僕が世界で会ってきた人々は、じつに楽しそうに、柔軟にエネルギーを作り出し、心豊かな生活を送られている人ばかりでした。それらの知識を活かし、ここ東北でまずは、自然エネルギーやバイオマスと農業を合せた自給自足型のモデル(支援活動拠点)を作ることができたらと思っています。
ところで昨年の夏、災害支援活動を行う上で便宜的に「グリーン アース キャラバン」という団体を立ち上げ、沿岸部に拠点を移しました。「バイオディーゼルアドベンチャー」は、そもそも支援活動を目的に生まれたプロジェクトではないため、長期支援に切り替えたおり、災害支援活動に特化した新たなチーム名を作りました。どうぞよろしくお願いします。
このチームは法人ではなく私個人で活動しているようなものです。一人ではたいしたことはできませんが、人々が力を合わせればできることは無限にあると思います。この大震災で死亡した人の数は、行方不明者も合わせて約2万人にも及びます。大災害と原発事故。現代において最も厳しい事態を今日本が迎えていることは、避けられようもない事実です。「自分に今何ができるのか」「自分の役割は何か」みんなで知恵を出しあって、様々なボランティアの方々とも協力し合って長期的にできることを考えていきたいと思います。ぜひ皆さんのお力を借してください。
今年も精一杯自分のできることをやっていきたいと思います。また、現場での対応だけでなく、被災地のことが忘れられないよう現地情報を発信し続け、また必要とあれば日本全国はもちろんどこへでも足を運ぼうと考えています。今年もブログ、ツイッター、毎日RT(電子新聞)、フェイスブック、講演などを通じて一人でも多くの方々へ情報を発信、交換して連携していきたいと思いますので、よろしくお願い致します。
そしてこの場を借りて多くの支援をいただいたすべての方々へお礼を言わせて頂きたいと思います。日本から海外までじつに数えきれないほどの方々に支援活動に関わっていただきました。本来ならば一人一人にお礼を申し上げるべきところですが、この場をお借りしてご挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。
2012年も精一杯走り続けたいと思います。
今後も応援とご協力をどうぞよろしくお願い致します。
山田周生
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