バスコファイブの入ったコンテナは、ミッチェル島という中洲地帯の保税倉庫へ届くことになっている。ミッチェル島の荷おろし業者「カナーン」の倉庫には、3時半ごろ到着した。朝田さんとはここで落ち合うことになっていたのだが、彼は絶妙のタイミングで僕らとほぼ同時に姿を現した。よかった。建物の中へ通されしばらく待っていると、社長兄弟の一人が現れ、気持ちよく迎えてくれた。工事用のオレンジジャケットと「ビジター」とかかれたバッジが各自に渡された。これから特別に保税倉庫の中に案内していただくからだ。通常この中には一般人は入れない場所だからだ。ドアをあけ、倉庫のコンテナヤードに出てゆく。そこには配達されたばかりのコンテナが、横たわっていた。胸が高鳴る。開けてみると、果たして!バスコファイブは、別れた時と同じ面持ちで静かに眠っていた。コンテナの幅がぎりぎりなので、車体とコンテナの間の隙間を少しずつ体を擦らせながら運転席までたどり着く。ドアを開くスペースがないので窓から運転席に滑り込む。おそるおそるエンジンをかけてみる。寒いコンテナの中で、ずっと船に揺られてきたバイオディーゼル燃料が、冬のバンクーバーでジェル化していないという保証はない。打つだけの手は打ってきたものの、急遽取り付けた燃料フィルタ竏窒フヒーターを作動させ、5分ほど待ってからイグニッションキーを静かにまわす。
一瞬、鈍い反応があったがなんとか一発でエンジンが生きを吹き返した。やった!スタッフから歓声があがった。こうやって、通関・車輌受け取りは終わり、予想を遥かに越えてスムースに受け取れてたことにビックリだった。これも朝田さんの努力のたまものだろう。倉庫を出て、バスコファイブを運転して路上に出ると本当に感動がこみ上げてきた。
ここで車の陸揚げに協力していただき、ガレージを貸していただいた中古車輸入販売会社「ジャパノイド」について紹介しよう。ジャパノイドとは、日本狂という意味。日本車大好きフリークが、他とは違う車を求めてやってくる、ちょっとかわった会社である。カナダ人のデイビッドさんと日本人の朝田さん、島田さんによる共同経営である。
日本の車は性能がよく、小さめで小回りがきく。カナダには、日本の中古車輸入に関して「製造から15年たったもののみ」という規制がある。更にJIS規格は認識されていない。だから、15年以上経った選りすぐりの車を輸入し、カナダの規格にあった改良と整備をほどこし、責任あるアフターサービスを提供するというのがこの会社の特徴。更に、軽自動車やディーゼル車、サイズの小さい車だけを販売するという、徹底したエコ振りだ。最近バイオディーゼルにも興味を持ち始め、いずれは小型の精製機を購入し、納品するディーゼル車に自社製のBDFを入れて、送り出そうと考えている頼もしい会社だ。