早朝4時50分起床。6時半のバンクーバー島へ行くフェリーに間に合うよう、家を出る。フェリーの出るホースシューベイまでは、約1時間だった。ひとり留守番してバイオディーゼルの精製を引き受けてくれたタツヤも、眠い目をこすりながら見送ってくれた。「ちゃんと帰ってきてくれよぉ。」
6時半発のフェリーは空いており、テーブルに電源が付いていたのでウェブサイトの英語版トップページの制作に時間を費やした。実はまだウェブサイトがきちんと動いていないので、忙しく廃油を回収している間も気になって仕方ない。英語のページをアップするにも、トップページがきちん整っている必要がある。少しでも時間があったら作業を進めたい。30分ほどして朝日が出てくるとデッキで少し撮影をする。
島の港付近は開発が進み、バンクーバー周辺のほかの町とそれほどかわらない印象だった。これから僕らは車で2時間弱、山の中へ入って行く。待ち合わせの公園があるナナイモのキャシードラルコーブに近づくと、鮮やかな緑色の苔と針葉樹の高木が目立ち始めた。道の脇には湖もある。カナダらしい自然だ。山深くなるにつれ、天気が怪しくなってきた。今日の天気予報は、雨時々曇りだ。
カナダ西部野生保護委員会バンクーバー島中部支部代表のアネットさんは、地元のテレビカメラマン、他の環境保護団体の活動家と一緒に公園入り口で待ちかまえていた。赤毛の彼女は、ストッツガルト生まれのドイツ系移民。現在はバンクーバー島在住。バンクーバー島の森林伐採は、よそう以上に深刻だった。原始林も比較的あたらしい森林も、材木会社などの私有地になっているため、何の許可もなく誰からも非難を受けず伐採してきたのだそうだ。アネットさんの団体は、カセドラルコーブの伐採を防ぐため、さまざまな機関(地元の政治家からユニセフまで)に働きかけて、土地交換という形でこの公園を少しずつ買い戻す運動を続けている。雨がひどくなってきた、残念ながら「クリアーカット」と呼ばれる、樹齢800 から1000年の木々の切り株でできた山へは、入ることができなかった。
湿地帯の保護団体をやっている赤毛のシェリと、パスタとガーリックブレッドの遅い昼飯を済ませ、午後3時Hupacasath First Nationと呼ばれるカナダの原住民の集会所を訪ねた。議長のジュディスさんは、日曜だというのに気持ちよく面会を引き受けてくれ、小さなエコカーに乗って腕と首に海大蛇のシンボルの付いたジュエリー、背中に大きな黒い刺繍の入った赤いマントという出で立ちで時間どおりに現れた。電話で話した時から、とても貫禄のある優しい人という印象だったが、お会いしてみると洞察力の鋭いとてもステキなひとだった。
いくつか話した中で僕の興味を引いたのは、この部族は2年前から部族が73%を所有するという水力発電所で作る電気のみを電力元として生活している。304年前BC最大の電力会社がガスによる発電を推進する方針を発表した時、それに加担する=温室効果ガスをふやすようなことはしたくない、という気持ちから自力で発電所を作る試みをした。費用の工面に1年、地元の水力発電に詳しい会社の協力を得て実際の建設に1年かかって作ったものなのだそうだ。232ヘクタールという小さな居住区に住む50世帯はもちろん、おおよそ6000世帯の電力使用量を、この発電所がまかなっている。
伝統的なイチイの木やヒマラヤスギの彫り物も印象的だったが、この訪問で何と言っても僕の心に響いたのは、彼女の最後の言葉だ。「この地球は、これから先きっと20030年はとても苦しい状況に陥ると思います。でも、私たちは小さな努力と大きな努力をバランスよく繰り返すことで、きっと何らかの結果を得てみんなが手をつないで微笑む時が来ると信じています。そのためには、廃品リサイクルをするとか自転車通勤するといった日常レベルでできることをし、政治や法律の改革、国同士の協力、グローバルな知識とテクノロジーの共有のような広い視野で解決法を探ることが重要なんじゃないかしら。」森の伐採が生態系を乱したり、地域住民の仕事を奪うという当たり前の理由に加え、彼女は深い森がなくなるとひとりになって伝統的な薬草をあつめたり、祈りのために森にこもることができないから困るのだと、とても興味深い話をしてくれた。テクノロジーと伝統を大切にする、とてもバランスのとれた女性だと思った。
帰りのフェリーでは疲れがでたのか、ぐっすり眠りこけてしまった。夢のなかチラチラまぶたの裏側によぎっていたあの赤は、ジュディスさんのマントだったのかもしれない。それは温かくて懐かしいブランケットのように、僕の疲れた目を癒してくれた。
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