オノンダガ・ネイション

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4月17日(木) はれ シラキュース(NY)→ダンモア(PA)
昨日の約束どおりチーフに電話をかけると、オノンダガ・ネイションのコミュニケーションセンターに来るよう言われた。とにかく言われたところへ行ってみることにした。着いてみると、他にも何人か集まっており、コミュニケーションセンターで働いているベティとサマーと、シックスネイションズノ環境タスクフォースのメンバーの一人、タスカローラ・ネイションのニールもいた。今日は学校があり、行かねばならないが、何か質問があればいつでも連絡してくれと言い残し、去っていく。チーフたちの連絡を受け、時間がないのにかけつけてくれたのだろう。ありがたい心づかいだ。
ここではゆっくり時間がすぎてゆく。言葉もわからないし説明もないから、ひたすら待つ。今までもそうだけれど、僕が彼らとつきあって感心するのは、自分にとってもしくはネイションにとって何が優先度が高いのか、かれらはいつでも心得ているということだ。時によっては予定をすっかり変えてしまうから、つきあっていて困ることも多々ある。でも、彼らは何が今必要なのかわかっていて、決して妥協しない。現代の文明社会で生きていて、僕たちは時々そのことを忘れているのかもしれない。
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ひとりのチーフが「じゃ、行こうか。後をついてきてくれ。」と言って、先導してくれた。しばらく走ってたどり着いたのは、ある農場だった。中からはビルと名乗る白人のファーマーが出てきた。どうやら彼が、昨日きいたバイオディーゼルを作っている農場経営者らしい。明らかに肥やしの匂いが漂っていて、見回すと何等もの牛、それからコンポストの山が見える。酪農が主な収入源だろう。聞いてみると、ビルは酪農一家の4代目、生活していくために酪農のほかにもいろいろ手を出したこともある。バイオディーゼルを作ることに、父親は反対だった。でも、毎月の燃料費が4000ドルを越えたとき、それを払い続けて農場をつぶすようなことはさせない、と彼の意思は強まった。今でも賛成してくれてはいないが、黙って見守るようになったという。
ビルのBDF精製システムは、半継続式とでも呼ぼうか1分間に60”80ガロン、圧力を使って反応を細いパイプの中で起こさせ、長いときで5時間持続して作ったことがあるという。しかし子供が家業を手伝うこともあり、薬品を手の届くところに置いておくことに不安を感じ、最近ではSVOつまりフィルターにかけた廃油のみを使用している。近くのレストラン数件から廃油を回収する。その他、食料品店などにゴミ箱も設置しており、それを回収してコンポストを作る。’98年にあった大きな暴風雨で倒れた木を再利用したのがきっかけで、町で倒れてしまった木や他の木々の成長を妨げることになる木だけを疎抜き、道の牛の糞や木屑と混ぜてねかしそれも販売している。オノンダガのクレーン操縦士たちは、とても腕がよいので、こういった正確さを要される仕事が得意だとも話してくれた。
コンポストの山を見せてもらったのだが、混ざっているビニール袋のくずの多さに驚いた。これはすべて手で拾うのだそうだ。それでも、始めた当初よりは減ってきた。どう捨てたらごみを生かせるのか、まだまだ教育が必要さと笑った。
僕らの廃油回収もそうだけれど、実感するのはリサイクルとか持続可能なサイクルというのは、すべての段階で人の協力とケアがあってこそスムーズに成り立つのだ。つまり僕らの場合でも、レストランの裏手にある油の回収コンテナを前に、水が混ざったり洗剤も一緒に入れてしまったために、BDFにできないことが多い。捨てる人が再利用についてもっと知識があれば、手間や無駄が省けるわけだ。こういったことがうまくまわり始めるてやっと、本当にサステイナブルと呼べる社会が実現するのだろう。
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バーミンガムという町の近くのガソリンスタンドで、トイレ休憩&ルートの確認をしていた時だ。自転車に乗ったマットと名乗る若い男性が息をきらして近寄ってきて、自分とその友人はバイオディーゼルを作っていて、廃油をあげたいし彼にも僕らの車を見せたいから、ぜひ来てくれないかと誘われた。彼の妹が僕らの車を見かけて電話をし、取るものもとらず駆けつけてきたらしい。おもしろそうなので、訪ねてみることにした。
地下室に設置されたシステムは、マエストロという市販の精製機を使用したものだった。まだ経験が浅いらしく、彼らからはいろいろ質問があった。どうも地下室の温度が低すぎて、反応時に十分熱くならないため、反応が完全に起こらず失敗を繰り返しているように思われた。それから、廃油をくれるというのでポンプから汲み上げ始め、僕ら3人ははその色に見覚えがあり思わず顔を見合わせた。ヒューストンのデルに教えてもらったことだ。白っぽく濁った廃油は、間違いなく油の試用期間を延ばすために入れる添加剤(マグネソル)が混じっているものだった。どのようにこしているのか訊ねると、取っ手のついたざるを持ってきた。残念ながら、この油をいただくわけにはいかないこと、反応前のフィルターがけはかなり重要で、最低でも100ミクロン、もっと細かいフィルターにかけている人もいることを伝えた。
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ショックを隠しきれないものの、彼らの顔には希望の光がともったように感じた。「廃油を提供してくれようという気持ちだけでもうれしいよ。 Please keep trying!!」 近所のレストランに廃油がないか電話までしてくれた彼らに、そう礼を言い一路ニューヨークを目指した。遅くなってしまったので、今夜中の到着は無理だが、できるだけ近くまで走りたい。実は給油しなくてはならず、できればどこかで電源を借りたかった。今日だけ午後から同行取材していたTBSの希望で、ブルーマー(PA)という町に立ち寄り空き地でプラントの説明を収録していたのだが、その間タツヤがご近所のかたに声をかけ、頼んでみると快く電源を取らせてもらえた。せっかくなのでプラントの仕組みをご披露、見ず知らずなのにとっても仲良くなってしまった。これもバイオマジック、人と人の出会いをもたらしてくれる魔法の車なのかな。
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廃油回収 0L
走行距離 312km
お世話になったひとたち: ジェイク、バージル、ニール、サマー、ベティー、ビル、マット、アール、マイク(父)、マイク(息子)、すずきさん、ひろせさん、まつおさん

カテゴリー: north america パーマリンク

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