羽黒山で「八朔祭」

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夜、羽黒山のある宿坊「大聖堂(だいしょうぼう)」へと向かった。この宿坊をひらいているのは、星野さんご夫妻。宿坊とは修険道を行う山伏や檀家さんたちが宿泊したりする御宿のこと。星野さんは山伏として修行を行いながら、修行の体験希望者も受け入れている。この日はちょうど山伏修行の「八朔祭」があるとのことで、いっしょに見学をさせて頂くことになったのだ。
 大聖坊に到着すると、ちょうど八朔祭へ行くための準備をしているところだった。星野さんの元、2泊3日で山伏体験修行をされている人々がこの日は5名。今日で2日目だという。この2泊3日の間は山登りや滝行、南蛮いぶしなどの修行が行われる。食事は一汁一菜、風呂も歯磨きも許されない。この山伏体験を行いたいと訪れる半数は女性なのだそうだ。
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 昔は春夏秋冬でそれぞれ山伏修行があったそうだが、現在は秋の修行「秋の峰」と「冬の峰」が行われている。秋の峰のはじまりには、お山に入っていく。そうして修行を重ねる。このお山は胎内である。つまり秋の峰は「擬死体験」をすることになる。生きながらにして自ら死す。そうしてしっかりと命と向き合い、最後は業を終え、生まれ変わって再生するという意味をもっているのだ。
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夜の10時。羽黒山で「八朔祭」が始まった。日本各地から集まり「秋の峰」修行を続ける163名の山伏たちが列をなし、参道を挟むように向き合って並ぶ。
 山伏たちはこの数日間山にこもり、風呂も入らず、山を登り滝にうたれ、修行を積んできた者たち。今日はその山伏修行の最終夜のしめくくりとして行われるものだ。
山伏たちは参道に向かい合うように並び終えるとひとりづつ名前が呼ばれ、「承けたもう」と大きな声でこたえていく。そうして護摩壇の大柴灯(だいさいとう)に火を放ち、ぴょんぴょんとはねるような動作で棒を受け取り、火に突き刺して焼き払い、五穀豊穣を祈願する。火柱はぼうぼうと真っ暗な空めがけて煙を出して燃えさかり、荘厳なほら貝の音が響きわたった。
祭りが始まってから約1時間後、山伏たちは最後にその火をぐるぐると回り、去っていった。
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「承(う)けたもう」
何かを言われると、山伏たちはすべてこの言葉でこたえる。「すべてのものを受け入れます」という意味。それこそが山伏たちの精神なのである。
この日、大聖坊で修行体験を行っていた5名の中に、じつは僕も以前から知っている方が偶然参加していた。アースデイで皆の平和への願いと祈りがこめられた「虹のリボン」を、この八朔祭の火でおたき上げをするため、修行を共にしているのだという。
星野さんは彼らとともに八朔祭が終わった火の前に立ち、祈りをささげ、虹のリボンをちぎりながら火にくべていった。ひとりひとり、直筆で願いが書かれたリボンは、火になって燃えて、やがて煙となって空へとのぼっていった。リボンが一瞬、虹色に光って燃えて、空高く消えていった。
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この夜は「大聖堂」へ泊まらせて頂くことになった。
広い畳のお部屋に、皆で布団をお借りして就寝。昔の山伏たちもこうやって宿坊で寝床を頂いて、山へ修行へと入っていったのだろう。
そんなことを思いながら、いつの間にかうとうと眠りについた……。

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