アースシップ

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3月31日(月)晴れ(強風)サンタフェ→タオス→サンタフェ
朝9時、アメリカインディアン美術学校(通称IAIA)へ廃油をもらいに行った。学校のカフェテリアに、以前そこに通っていたモトイさんが頼んでおいてくれたのだ。フリーの仕事で時間が比較的自由なのと気転が利くをいいことに、彼女にはお世話になりっぱなしで感謝している。柄杓ですくって、なかなかの収穫だった。
午後は、タオスの近くで兼ねてからぜひ訪ねたいと思っていたアースシップへ向かった。アースシップ・バイオテクチャーは、1970年代初頭マイク・レイノルズという建築家が、廃材を利用した建物を建て始めてはじまった。飲み物のアルミ缶や古タイヤなどは土を詰めることで、断熱効果のある素材へと変身する。それに目をつけた彼は、実験と失敗を繰り返しながら、アースシップのコンセプトを実践してきた。持続可能であること、エネルギーは自給自足であること、誰もが建てられる家であること、これらが基本モットーなのだそうだ。あまりにも実験的で開発途中の技術もあったため、1990年代には建築家としての資格を失うという危機もあったらしいが、いまではいくつかの譲歩をした上で、アースシップの建築は続いている。
オフィスで働いているローズが、いくつかのユニットを案内してくれた。ずんぐりむっくりしたU字型のアースシップは、アンモナイトのような感じだ。北側には土が盛ってあり、半分穴倉というか半地下のように建ててある。南側には、パッシブソーラーを利用した大きな窓があり、土の壁が昼間太陽熱を吸収するから、他の暖房は必要ないのだそうだ。カラフルなガラスのボトルの底が、明り取りとインテリアの役割を果たす。屋根から集められた雨水は、ろ過されて利用。ソーラーパネルと風車からとった電力を蓄電機にため、コンバーターを通して使用する。排水は、キッチンからの水が植物とトイレに使用され、トイレから出た排水は、汚水浄化槽を通ったあと小石や植物の自然フィルターを通ってから土に返される。どのユニットも家の中に庭がり、たくさんの植物が生えている。足を踏み入れると、一瞬熱帯を思わせるような匂いがした。まっすぐで平らな壁がないのも特徴だ。とにかく摩訶不思議でユーモアにあふれているデザインだ。
フェニックスという比較的新しい、まだ完成していないが貸し出しを始めているユニットも、今夜部屋を借りているボビーとローラのご好意で見せてもらえた。このユニットでは、90年代の問題後、州の規制に反しないでマイクの理想を追求しているとのことだ。部屋の裏に回ると、タイヤと土がむき出しになっていた。なんだがきれいに見えるから不思議だ。よく考えると、古タイヤと泥なのに・・・。フェニックスの南側は大きなグリーンハウスになっているのだが、そこに池を作る準備がすすんでいた。ローズは、「ここでタラピアという魚で、下水処理を試してみようとしているんです。タラピアは、もともと水を洗浄する能力を持っているらしいの。」と話してくれた。どうなるかまったく予想もつかない実験らしいが、ますますマイク・レイノルズに興味をそそられた。出かけていてルスなのが、残念だった。
ローズにお礼を言って別れてから、もう一軒、タオスへくる途中に寄ったリフトギャラリーのオーナー、マークとベッツイーに教えてもらったロバート・プラーという人のアースシップを訪ねた。電話をかけたところ、彼も留守ではあったが家の外には「どうぞ!」という看板が立っており、外から拝見することにした。と、家もさることながらここをたずねたかったのは、彼がデモ用のハンマーのリムジンをバイオディーゼルで走らせていると聞いたからだ。彼の家に近づくと、嫌でもその白い巨大なハンマーが目に入った。彼の家にはかなり効率がよいと聞いているタイプの風車が回っていて、車の横には「フリーレンジ、オーガニック水素」と書かれたタンクがあった。ちょっと離れたところには「バイオディーゼル」とマークされたドラム缶がある。そうか・・・この車は、バイオディーゼルと水素ガスのハイブリッドなのだ。元はサーカス出身だというこの変わり者のロバートにも、ぜひ会ってお話してみたいと思った。
旅を続ければ続けるほど、また訪ねたい場所が増えてしまう。それがこのプロジェクトの醍醐味であり、ジレンマだ。今日もまたそれをかみ締める、すばらしい一日だった。
廃油回収 25L
走行距離 0km
お世話になった人たち:モトイさん、ベッツィー、マーク、ローズ

カテゴリー: north america パーマリンク

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