ダーティーハンズ・バイオディーゼルコープ

午後2時過ぎ、シアトルへもどりダーティーハンズ・バイオディーゼルコープの責任者、ライルさんと会った。彼のコープは、会員が回収してきた廃油でバイオディーゼルを作って会員達に燃料を配給している草の根的活動をしているところだ。今までメールでやり取りをしてきたが実際に会うのはこれが初めて。北欧系の出身とみられるライルはすらりと背が高く、ちょっとくたびれたフェアアイルのセーターのよく似合う、穏やかな印象の人だった。いかにも手作りの「バイオライルのバイオディーセルワークショップ」というロゴがついた青いワゴン車を停めると、コープのなかへ案内してくれた。コープと聞くと日本の生活協同組合を思い出すかも知れないが、彼のコープはバイオディーゼルの協同組合だ。組合員が協力してレストランなどから廃油を集め、ライルがそれを精製して燃料にする。できた燃料は、回収してくる量の割合にあわせて組合員に格安で売られるというシステムを取っている。大手の石油会社がなかなか手を出したがらない背景の中で、アメリカのバイオディーゼル利用者たちは、こうやって供給源を確保している。ライルの話に寄ると、何よりも廃油の確保が難しいということだった。彼は以前科学の教師だったので、今でも学校を回りバイオディーゼルのデモをしたり、ワークショックを主催している。
コープは言ってみればかなりファンキー。彫刻家であるトムの作業場の中に、コープの会員が提供したPro190という精製機がどっしりとかまえており、脇のカウンターにはフラスコやガラスやプラスチックの容器がならべてあり、小学校の理科の実験室を髣髴させる。廃油を回収し、自分の手で井戸のくみ上げポンプのような手動のポンプで給油するから「ダーティーハンズ」という命名なのだと話してくれた。
そうするうちにこのコープの持ち主のトムが現れた。大家のトムはかなりの車狂で、古い日本車やドイツ車を数台持っている。奥さんのものだという緋色のムスタングは、場違いともいえる作業場のなかで、美しく光っていた。内装など少しずつ手を加えて改装したオープンカーで、トムのご自慢だ。
ともあれ僕たちチームは、マドローナというとてもは雰囲気のよい地域がすぐに気に入ってしまった。家に帰り、住宅街の路上で今日回収した廃油の精製にかかる。バンクーバーで一杯にした燃料タンクは、空に近い。シアトルの気温はバイオディーゼルにはやさしいとは決して言えない寒さなので、油が固まりやすくどうしても各行程に時間がかかってしまう。たとえば廃油をフィルターにかけてタンクに移す作業だけでも、通常の3倍も時間がかかってしまう。少しずつ、少しずつ油を注ぐ。新しいステップの前には、タンクを温める。住宅街の道路沿いで夜通し作業をするのは心苦しいが、”We have no choice.” (選択の余地はない。)ひたすら精製あるのみだ。
IMG_0226.JPG IMG_0264.JPG IMG_0251s.JPG IMG_0270.JPG
廃油回収量 102L
本日の走行距離 146km

カテゴリー: north america パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です