バンクーバー出発

いよいよ国境越えの朝が明けた。何だか落ちつかず早く目が覚めてしまった。昨日も書いたけれど、今回日本を出る前から一番気になっていたのは、この国境越えだ。違法なことは何一つしていないのだからと自分に言い聞かせるが、難癖をつけようと思えばつけられないこともないだろう、そう思うと一抹の不安がよぎる。
9時過ぎジャパノイドに到着した。彼らとも今日でお別れだ。言葉では伝えきれないほど、お世話になった。メカニックの小村さんに簡単な車のチェックまでしていただき、みんなで記念撮影をしてから出発した。
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バンクーバーでバイオ燃料を扱うカスケイディアと、その会社が経営しているオートガスというスタンドの名前は、バンクーバーで廃油を集めている際何度か耳にしていた。マネージャーから「バイオ燃料のことなら彼に」と紹介されたカーティスは、いつもはデルタ市のオフィスで働いている。11時半近くオフィスのドアを開けて入っていくと、気さくで早口のカーティスは目を輝かせて出てきた。小雨が降っていたのでジャケットをはおり、プラントの入っている後ろのドアを開けると、更に目の色を変えて「すごいねぇ!気に入った!」と歓声をあげる。「ちょ、ちょっと待ってくれ。バイオディーゼルの技術屋を呼んでくるから。」と言うや否や、ビルの中に消えていく。
バイディーゼルは低温に弱いので(ジェル化してしまう)、冬季は通常のディーゼルを半分混ぜる。(B50)今まで化石燃料を扱ってきた会社が、地球の温暖化や残り少ない石油の行く末を考え、代替燃料や持続可能な消費の仕方に興味を持ち始める。素人から見たらなんとも自然な姿勢だけれど、私腹を肥やしてきた大手の石油会社はその富を諦めることができない。カーティスに寄れば、彼の会社は他の会社から裏切り者のようなレッテルを貼られ、非難を受けることもあったという。でも彼らは市や州政府と歩み寄り、規制や法律を変える努力をしている。2020年には2007年の数字と比較して、全ての燃料が33%のリニューアブル燃料を含有していなくてはいけないという法律ができるよう努力しているという。そんなことが本当に可能なのか?という問いに彼は胸を張って”Without a doubt.”(疑いの余地なく)と言ってのけた。現在カスケイディアが経営するスタンドは、カナダ西部に600店。そのうちバイオディーゼルを扱っているのは9店舗のみだ。この法律が通れば、うちだけでも600店舗すべてがバイオ燃料を扱うことになる。頭の回転の速い彼の英語に追いつくのは至難の業だったが、カーティスの情熱の源は紛れもなくとても澄んでいるのは僕にも伝わってきた。「そりゃこれはビジネスだ。儲からなかったら続かない。でも、考えて見てくれ。どうせ金儲けをするのなら、地球や周囲の人たちが得をするようなやり方をしたいとは思わないか?私はねぇ未来を考えると消沈する反面、自分に何ができるだろうと考え始めると、まだまだいろいろあるという気がしてうれしくてしょうがないんだよ。」
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帰り際、北米を一年かけて走り人々の意識を高めたいというカナダ人カップルを紹介してくれた。各地に行ってその土地の有力者(市長など)に会い、彼らが作った「地球を守るために私たちができることリスト」の中からひとつの項目を選んでもらい、それをメディアで紹介するという運動を計画している。ぜひ彼らと繋がって欲しいというのだ。
僕らの旅もまた、人々とつながりたいという願いのもとに始まっている。世界へ向けての出発点として選んだバンクーバーの町で、僕らはさまざまなひとたちに出会った。小型車の輸入に力を注ぎバイオ燃料にも興味を持っているジャパノイド、何十年も会っていなかったのに差し入れまでくれて情報集めや廃油回収を熱心にサポートしてくれたタツヤのいとこマスミさん、快く油をくれた清、瀬戸の両すし店、森林伐採と生態系を守るために闘っているアネットやジュディス、そしてエコ燃料の推進をはかる石油会社カスケイディア。みんな努力している。みんな何かをしている。彼らのメッセージを運ぶのも、自分たちの役目の一つなのだと思う。

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